ホッホーとは、ふくろうの鳴き声です。また、「なるほど、なるほど、ホッホー」と感心する声でもあります。


by hohho-biny

2008年 03月 19日 ( 1 )

わたしを束ねないで

わたしを束ねないで_f0139963_5353175.jpg    わたしを束ねないで
                    新川和江
         
      わたしを束ねないで
      あらせいとうの花のように
      白い葱のように
      束ねないでください わたしは稲穂
      秋 大地が胸を焦がす
      見渡すかぎりの金色(こんじき)の稲穂
 
      わたしを止めないで
      標本箱の昆虫のように
      高原からきた絵葉書のように
      止めないでください わたしは羽撃き
                             こやみなく空のひろさをかいさぐっている
                             目には見えないつばさの音
わたしを束ねないで_f0139963_6103432.jpg
    わたしを注(つ)がないで
    日常性に薄められた牛乳のように
    ぬるい酒のように
    注がないでください わたしは海
    夜 とほうもなく満ちてくる
    苦い潮 ふちのない水



わたしを束ねないで_f0139963_6112545.jpg  わたしを名付けないで
  娘という名 妻という名
  重々しい母という名でしつらえた座に
  坐りきりにさせないでください わたしは風
  りんごの木と
  泉のありかを知っている風



わたしを束ねないで_f0139963_623222.jpg    わたしを区切らないで
    ,(コンマ)や.(ピリオド) いくつかの段落
    そしておしまいに「さようなら」があったりする
    手紙のようには
    こまめにけりをつけないでください 
    わたしは終りのない文章
    川と同じに
    はてしなく流れていく 拡がっていく 一行の詩

   「わたしを束ねないで」 新川和江 童話屋より
   1966年発表の詩で、新川氏37歳の時。
   ☆私は20代でこの詩に出会い、女の本質を見る目
   の確かさに感動し、共感したのでした♪☆
by hohho-biny | 2008-03-19 07:09 | 詩の時間