少女
2012年 08月 04日
南桂子の銅版画に魅せられ、
啓発されて作詩した詩人たちがいます。
谷川俊太郎もその一人で、
数編の詩を画に捧げています。
その一つに「少女」があります。
先日の日曜美術館で、
ご本人が朗読しました。
南桂子の「少女」を言い得て妙。
手元の南桂子生誕100年記念展の図録に
その全詩が載っているので、
書き留めておきます。
少女は、南桂子の永遠のテーマで、
その不思議な瞳と佇まいに、ホッホーも惹かれ、想像をかき立てられます。
少女 谷川俊太郎
1 いつうまれたのか
わたしはしりません
じぶんがだれなのかも
いまがいつか
わたしはしりません
ここがどこかも
でもわたしはいます
ここに きのかたわらに
はなをだいて
とりたちといっしょに いま
2 あなたがわたしをみつめると
あなたのひとみのなかに
わたしがいます
めはいるぐち
こころへの
めはでぐち
こころからの
わたしがあなたをみつめても
めをそらさないで
3 えのなかにいらっしゃい
わたしのそばへ
ことばをわすれて
なにもしないでただたっていると
きのよろこびがみえてきます
みずのかなしみがきこえてきます
4 えがかれたかみをやぶっても
わたしはいなくなりません
わたしはもう
あなたのこころのへやにすんでいます
わたしはなつかしいどこかからきて
なつかしいどこかへかえっていきます
あなたといっしょに
5 わたしたちはおなじものがたりのとちゅうで
ひとやすみしているのです
ゆびさきがきのうのつきにふれています
つまさきがあしたのなみにあらわれています
こころはまだうたわれていないうたで
いっぱいです