母が娘二人に贈った言葉
2012年 01月 14日
かつて、娘たちが嫁ぐ日に母が贈った版画と短歌。
母も娘たちも、今はすっかり忘れてしまった一連の写真に添えた短歌。
忘却の彼方の過去を記憶にとどめるために記録しておきます。
大正生まれの母が昭和の娘たちに託した気持ち。
芽吹きたる桜並木の道の辺に
春を拾いて北に運ばん
親と呼び子と呼ぶかたち印画紙に
刻めばすがし春宵の宴
青草のもゆるに似たるふたりにて
残雪の駒岳春のけわいす
大きなるケーキに真向い大きなる
心持てよと声の寄せくる
あしたよりはばたく翼蒼穹に
ここにも生の命あたらし
あるかなきか細々つづく一筋の
道のゆくてに春愁のあり
胸元にかすかににおう洋らんの
ゆれとどまらぬ春の宴よ
かくれんぼおにさんこちらと呼ぶ声の
今宵に限る吾が子との距離
祝福を翼にのせてはばたかん
春冷えしきる空の極みに
はしとはしふたりで持てばなわとびは
しあわせの文字うまくくぐせり
子の干支をかかえてみれば物言わぬ
口から尾まで血の通いくる
コバルトの海に浮かびてなお染まぬ
若人の顔 陽に輝けり