夕ぐれの時はよい時
2009年 05月 29日
やなせたかしの”たそがれ詩集”を読みながら、
ふと思い出した詩があります。
「夕ぐれの時はよい時」 堀口大学
そして、いわさきちひろの美しい夕焼けの絵葉書
「海の夕焼けと手紙を書く少女」があったことを思い出しました。
何かをきっかけに、
セピア色の引き出しを開けます。
夕ぐれの時はよい時。
かぎりなくやさしいひと時。
童話屋 2004年初版
それは季節にかかわらぬ、
冬なれば暖炉のかたわら、
夏なれば大樹の木かげ、
それはいつも神秘に満ち、
それはいつも人の心を誘う、
それは人の心が、
ときに、しばしば、
静寂を愛することを、
知っているものの様に、
小声にささやき、小声にかたる・・・・・・・・
夕ぐれの時はよい時。
かぎりなくやさしいひと時。
若さににおう人々の為めには、
それは愛撫に満ちたひと時、
それはやさしさに溢れたひと時、
それは希望でいっぱいなひと時、
また青春の夢とおく
失いはてた人々の為には、
それはやさしい思い出のひと時、
それは過ぎ去った夢の酩酊、
それは今日の心には痛いけれど
しかも全く忘れかねた
その上(かみ)の日のなつかしい移り香。
夕ぐれの時はよい時。
かぎりなくやさしいひと時。
夕ぐれのこの憂鬱は何所から来るのだろうか?
だれもそれを知らぬ!
(おお! だれが何を知っているものか?)
それは夜とともに密度を増し、
人をより強き夢幻へとみちびく・・・・・・・・
夕ぐれの時はよい時。
かぎりなくやさしいひと時。
夕ぐれ時、
自然は人に安息をすすめる様だ。
風は落ち、
ものの響きは絶え、
人は花の呼吸をきき得るような気がする、
今まで風にゆられていた草の葉も
たちまちに静まりかえり、
小鳥は翼の間に頭をうずめる・・・・・・・・
夕ぐれの時はよい時。
かぎりなくやさしいひと時。
やなせたかし 肉筆作品
えんぴつ島のアンパンマン 1996年頃
2009/5/27 弥生美術館にてホッホー撮影